本日(22日)の日経新聞より。
厚生労働省と国土交通省は個人が所有するマンションや戸建て住宅の
空き部屋に旅行者を有料で泊める「民泊」を来年4月にも全国で解禁す
る方針だ。現在は旅館業法などで原則禁止しているが、無許可の営業
が広がり、トラブルも相次いでいる。訪日客の急増で宿泊施設の不足が
深刻になっており、早急に明確な基準をつくり、安心して使える民泊を
普及させたい考えだ。
政府は6月にネット仲介を通じた民泊の規制改革について16年中に
結論を得ることを決めた。ただ法令違反が続き、旅館業法違反の容疑
で逮捕者が出たり、見知らぬ人物の出入りによる近隣の苦情が増えた
りするなどの問題が噴出。厚労省と国交省は法改正を必要としない範
囲で早急に基準を整えることにした。
厚労省は今年度中に旅館業法の省令を改正し、営業許可の基準を
緩和する。「ホテル」「旅館」「簡易宿所」「下宿」の4種類の営業許可に、
新たに「民泊」を加える案が有力だ。都道府県などに申請して基準を満
たせば、許可を得られる。
許可の基準は、客室数の規制がないなど民泊に最も近い簡易宿所を
参考にする。簡易宿所は客室の延べ床面積が合計33平方メートル以上
必要だが、一般住宅を利用する民泊の場合は広さの基準を緩和する見
通しだ。旅館業法には宿泊名簿の管理や入浴設備、換気などの詳細な
規則があるが、民泊の実情に合わせた新たな基準を検討する。
国交省は建物の安全規則を定めた建築基準法の運用で民泊の扱いを
検討する。旅館業法で営業許可が出ると、建築基準法では自動的に「ホ
テル・旅館」に区分けされ、非常用照明の設置などが求められる。ただ実
際に貸し手が生活する住宅であれば、新たな設備の設置を不要にする
方針だ。
旅館業法の許可は都道府県などが出すため、自治体が民泊の実態を
把握しやすい。近隣で事故やトラブルが発生した場合には立ち入り調査
や警察との連携も取りやすくなるとみている。ただ訪日客の場合、言葉や
文化の違いから深夜の騒音などで近隣住民とのトラブルが相次ぐことも
予想される。特に住宅地などで民泊を始める場合、こうした問題をどう防
ぐかが大きな課題になる。
すでに政府は国家戦略特区で旅館業法の適用を特例で外し、訪日客向
けの民泊を認める制度を設けている。東京都大田区が早ければ来年1月
に開始するが、7日以上の滞在が条件になる。旅館業法の許可であれば、
宿泊日数の制限がない。ただ一方
で、今回の制度は旅館業法の許可を受けるため、固定資産税を6分の1に
軽減する住宅向け特例が当面は適用されないデメリットもある。
厚労省と国交省は長期的な視点で法改正を含む対策も検討する。月内に
有識者会議を立ち上げ、違法営業の取り締まりなどのトラブル防止策や適
切な課税方法などを議論する。今年度内に方向性をまとめ、来年末までに
報告書を作成する。与党との調整も踏まえ、法整備は早くても17年の通常
国会になりそうだ。